「カンボジアでは、なぜ十分に学校へ通えない子どもたちが今も多く存在するのか?」
この問いの背景には、単なる貧困だけでは説明できない、深い歴史と構造的な課題があります。
本記事では、カンボジアの教育格差が生まれた理由を歴史から紐解き、現在の教育環境、そしてこれから必要とされる支援の形について解説します。
教育格差の出発点 ― ポル・ポト政権の影響
カンボジアの教育格差を語るうえで、1975年〜1979年のポル・ポト政権(クメール・ルージュ)の存在は避けて通れません。
この時代、政権は「知識人=敵」という極端な思想を掲げ、教師、医師、技術者、さらには眼鏡をかけているだけの人までもが「知識層」として迫害されました。
学校は閉鎖され、教育制度そのものが崩壊。多くの教師が命を奪われ、教育の継承が断絶されたのです。
この約4年間で、人口の約4分の1が死亡したと言われています。
教育とは本来、世代から世代へ受け継がれるものですが、カンボジアではこの時代に「教える人」も「教えられる仕組み」も失われました。
戦後復興と教育再建の遅れ
政権崩壊後、カンボジアは内戦と混乱の中で長い復興期に入ります。
インフラ整備、医療、治安回復が優先されるなか、教育は後回しにされがちでした。
特に深刻だったのは、教師不足です。
教育を受けた世代がほとんど存在しないため、「十分な教育を受けていない教師」が次の世代を教えるという負の連鎖が生まれました。
その結果、
- 教師の質にばらつきがある
- 教材やカリキュラムが統一されていない
- 暗記中心で思考力を育てにくい授業が多い
- 音楽、図工などの芸術教育はほとんどない
といった課題が現在も残っています。
都市部と農村部に広がる大きな教育格差
現在のカンボジアでは、都市部と農村部の教育格差が顕著です。
首都プノンペンや主要都市では、私立学校や国際校も増え、英語教育やIT教育を受けられる環境が整いつつあります。一方で、農村部では以下のような現実があります。
- 学校まで片道1〜2時間かかる
- 教室や机が不足している
- 電気やインターネットがない(あっても回線が遅い)
この環境では、「学びたい」という意欲だけでは乗り越えられない壁が存在します。
貧困と「働く子どもたち」
教育格差を拡大させるもう一つの要因が、家庭の貧困です。
農村部では、子どもが家計を支える労働力として期待されることも珍しくありません。
- 農作業の手伝い
- 市場での物売り
- 建設現場や工場での軽作業
「学校に行くこと」よりも「今日の生活を支えること」が優先され、結果として中途退学につながります。
特に中学校以降になると、通学費用や制服代が負担となり、進学を諦めるケースが急増します。
「学校に入ること」はできても、「学び続けること」が難しいのが現状です。
農村部ほど修了率は少ない傾向があり、2023年時点の中学校修了率は56%となっています。
参考:ユニセフ世界子供白書
教育格差は「未来の格差」につながる

教育を受けられないことは、単に知識が不足するという問題ではありません。
- 安定した仕事に就けない
- 情報にアクセスできない
- 貧困から抜け出せない
こうした状況が連鎖し、次の世代にも同じ格差が引き継がれてしまいます。
そして、格差が広がれば治安や社会の発展にも悪影響を及ぼします。
教育格差は、個人の問題ではなく、社会全体の課題なのです。
今、求められている新しい教育支援の形
従来の「学校を建てる」「教科書を配る」支援に加え、今注目されているのがデジタル教育や動画教育です。
- 教師不足を補える
- 地域差を超えて同じ質の教育を届けられる
私たちは、日本の優れた教育コンテンツを動画にし、無料で届ける取り組みを進めています。
これは、教育の断絶を超えて知識をつなぐ挑戦です。
私たちにできること
カンボジアの教育格差は、遠い国の問題ではありません。
「知ること」「伝えること」「小さく関わること」から、誰でも参加できます。
- 情報をシェアする
- 教育支援活動を知る
- 少額からでも支援に参加する
一つひとつは小さくても、学ぶ機会を奪われた子どもたちの未来を変える力になります。
カンボジアの教育格差は、悲劇的な歴史と、今も続く社会構造の中で生まれました。
しかし同時に、変わり始めている現実もあります。
教育は、時間がかかるからこそ、続ける意味があります。
私たちは、これからも「学びを届ける」活動を通じて、次の世代につながる未来をつくっていきます。

