近年、「マングローブ林」という言葉をニュースやSDGsの文脈で目にする機会が増えています。
環境保護、気候変動対策、生物多様性、そして地域の暮らし——。
実はマングローブ林は、これらすべてに深く関わる、地球規模で重要な自然資源です。
では、マングローブ林とは一体何なのか。そして、なぜ今、世界中から注目されているのでしょうか。
マングローブ林とは何か

マングローブ林とは、熱帯・亜熱帯の海岸や河口付近に生育する植物群の総称です。特定の一種類の植物を指す言葉ではありません。
塩分を含む水中でも生育できる複数の樹種が集まり、独特の生態系を構成しています。
潮の満ち引きによって環境条件が大きく変化するため、他の森林では見られない形状の根や呼吸方法を持つ植物が多く、自然環境への適応力の高さが特徴です。
主に熱帯から亜熱帯地域の沿岸部に分布しており、カンボジアでもタイ湾沿岸を中心にマングローブ林が広がっています。
これらの森林は、陸と海をつなぐ「緩衝地帯」として、長い年月にわたり地域の自然環境を支えてきました。
防災の観点から見たマングローブの役割

マングローブ林が注目される理由の一つに、防災機能があります。
マングローブの密集した根や幹は、津波や高潮、台風・サイクロンによる高波のエネルギーを減衰させ、内陸部への被害を軽減する効果があるとされています。
実際、マングローブ林が残る地域では、沿岸災害の被害規模が比較的抑えられたという報告もあります。
人工的な防波堤や護岸工事と比べ、マングローブ林は維持管理のための継続的なコストが低く、長期的に機能し続ける点も特徴です。
気候変動の影響により沿岸災害のリスクが高まる中、自然の力を活かした防災対策として、再評価が進んでいます。
気候変動対策としての価値
マングローブ林は、一般的な陸上植物と比べて二酸化炭素(CO₂)を吸収・貯留する能力が高い生態系としても知られています。
特に、地上部分だけでなく、土壌中に大量の炭素を蓄積する点が特徴で、こうした海洋・沿岸生態系による炭素貯留は「ブルーカーボン」と呼ばれています。
マングローブ林が破壊されると、長年にわたり蓄えられてきた炭素が一気に大気中へ放出される可能性があります。
そのため、植林による回復だけでなく、既存のマングローブ林を保全すること自体が、気候変動対策として重要な意味を持っています。
生物多様性と漁業を支える基盤
マングローブ林は、多くの生物にとって重要な生息・成育環境です。
魚や甲殻類の稚魚が身を守りながら成長できる場所であり、沿岸漁業における資源供給の基盤となっています。
このため、マングローブ林の減少は、生物多様性の損失だけでなく、地域の漁業資源や食料安全保障にも影響を及ぼします。
カンボジアの沿岸地域においても、マングローブ林と漁業は密接に結びついており、森林の状態が地域経済に直結しているケースは少なくありません。
なぜ今、マングローブ林なのか

近年、養殖池の開発や都市化、過剰な伐採などにより、世界各地でマングローブ林が減少してきました。
これまで、経済開発の中でその価値が十分に評価されてこなかったことが、大きな要因とされています。
しかし、防災、気候変動対策、生物多様性保全、地域経済の持続性といった複数の観点から、マングローブ林の重要性が再認識されるようになりました。
マングローブ林は単なる自然保護の対象ではなく、環境と社会を同時に支える基盤として、今あらためて注目されているのです。
Cambodia+とマングローブ林

私たちCambodia+では、教育支援や環境保護を活動の柱としてきました。
その中でマングローブ林の保全に取り組む理由は、単に自然環境を守るためだけではありません。
現地の人々がマングローブ林の価値を理解し、将来にわたって維持していける仕組みをつくることを重視しています。そのために、植樹活動とあわせて、環境教育や地域との協働を重ね、一時的な支援活動で終わらない形を目指しています。
近年になって、防災や気候変動、生物多様性といった観点から再び注目されるようになり、マングローブ林は「守るべき自然」から「社会を支える基盤」へと位置づけが変わりつつあります。
こうした変化を一過性の流行で終わらせず、現地に根ざした持続的な取り組みにつなげていきたいと考えています。
マングローブ林の保全を通じて、環境と人の暮らしが両立する未来を、少しずつ形にしていく。その積み重ねが、次の世代に引き継がれる価値になると信じています。

